【4対1理論】バリデーション用基準温度計の精度の選び方
ドライブロック(良質な熱源)を用いて比較温度校正を行うといった以下の検査事例で検討してみましょう。ここでの要求精度は、121℃で±0.5℃とします。
計測されるもの:デジタル温度計+バリデーション用T熱電対(要求精度0.5℃)
計測するもの:基準温度計(指示計器付温度計/トレーサブルな温度計)
結論から述べると、検査に用いる計測器は、対象温度計の要求精度に対して、4倍精度の高いものを用いることで適切な検査を実施することができます。
この場合、要求精度:基準温度計の精度は4 : 1となり(基準温度計は指示計器Aと測温抵抗体Bで構成)、以下のように表されます。
0.5 : √A2+B2 = 0.5 : 0.125 = 4 : 1
次に、この時の測定の精度を求めます。以下の式は「誤差伝播の法則」として広く使用されている式です。計測されるものの精度(要求精度)をα、計測するものの精度をβ、測定の精度をγとします。
γ=√α2+β2
この場合精度βが、精度γに影響を及ぼします。つまり、基準温度計の精度が大きく(悪く)なると測定の精度γの数値は大きく(悪く)なります。因って測定の精度γが、計測されるものの精度αに近い値になれば、実施した測定は適切に行われたと判断することができます。
なぜ4:1で良いのでしょう。計測されるものの精度αから見て、測定の精度γが妥当なものであることを判断するために影響度δについて考えます。
δ=γ / α (影響度=測定の精度 ÷ 要求精度)
e.g., δ = √0.52+0.1252 / 0.5 ≒ 1.03 となり、0.03だけ大きい結果となります。
0.03という数値は、影響度δを有効数字2桁で表した場合、小数点以下第二位を四捨五入すると、影響度δ=1.03は1.0となります。
精度比 |
要求精度α |
基準温度計の精度β |
影響度δ |
1 : 1 |
0.5℃ |
0.5℃ |
1.41→1.4 |
2 : 1 |
0.5℃ |
0.25℃ |
1.12→1.1 |
3 : 1 |
0.5℃ |
0.17℃ |
1.06→1.1 |
4 : 1 |
0.5℃ |
0.13℃ |
1.03→1.0 |
10 : 1 |
0.5℃ |
0.05℃ |
1.00→1.0 |
精度比が4:1から10:1と高い場合には、影響度δはすべて1.0となり、計測するものの精度(ここでは基準温度計の精度)βが、計測されるものの精度(要求精度)αに影響しないことがわかります。精度比が低い場合(1:1 ~ 3:1)は影響度δが1.1以上となり、1.0を超えた分が影響として残ることになります。
検査に用いる計測器は、対象温度計の要求精度に対して、4倍精度の高いものを用いること、つまり、要求精度が0.5℃の場合、精度が0.125℃(≒0.13℃)の基準温度計を用いることで、検査を適切に実施することができます。
技術資料のダウンロード:計測されるものと計測するものの精度比について
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